ホルムアルデヒド

僕のこころ

エースマンはいない

僕は願った

退屈で寂しい日々から救って欲しいと

星に願った

涼しいベランダは家の中とは全く別の世界に思えるから

僕はいつもそこで静かに泣く

そうして願う

僕のActive

僕のエースマン

僕の救世主

僕をこのちっぽけな世界から救い出してくれる

僕の足枷を外してくれる

僕を撫でてくれる

そんな

僕の

えーすまん

 

 

願えば願うほど飢える

苦しい

お腹空いただけなの

何がおかしいの

いけないことするの

頭が駄目なの

食べるのがいけないの

欲しいのがいけないの

 

寂しいのはどうしてなの、と聞いてみた

ビー玉が足りないの、と言った

そんなもので埋まるの?、と聞いた

お前は知らないから分からない、と言った

何が知らないの、と聞いた

飴玉、と言った

静かにカランコロン転がる私

首を吊り揺れる僕

 

私は見ていた

足に縋る不安

僕は見ていた

蛻の心臓

 

私は見て見ぬ振りをした

手錠がくい込んだ手首

裂けた喉から響く悲鳴

僕は見て見ぬ振りをした

詰め込まれる砂

吐き戻された時計

 

僕は痛かった

どこまでも食い込む鎖

体が動かない

何も出来ない

裂けた体から空気が漏れる

穴だらけの僕

 

私は空腹だった

空っぽの体

そこにありったけの砂を注ぐ

満たされたい心が錯覚を起こす

嘘つきな私

 

頭に鳴り響く警告音

僕は気にしない

首が絞まる

前を見る

視界が揺らぐ

歩き出す

僕は苦しくて動けなくなった

そこで初めて知ることになる

僕は繋がれている

大きな塊に

それが膨らむにつれ僕の首は絞まる

歩かなくても前を見なくても絞まる

泣いても叫んでも声にならない

空気が漏れるだけで

縄の絞まる音

操り人形の糸

 

羨ましくてたまらない

幸せそうなその顔

楽しそうな声色

満たされたような文章

日々を楽しく明るく過ごす者

どうしてそんなに満たされるのか

私は知りたい

何を喰えばそんなにも幸せな顔が出来るのか

砂を注いでもビー玉を詰めても

私は冷たかった

布団のぬいぐるみは、シンと冷たかった

私は知ることになる

そんなもので塞がるような隙間ではないこと

私が無くしたものはそんなもので代用できる代物ではないこと

幼い頃よく味わったもの

知っているから余計ひもじい

私は誰からも貰えない呪いにかかった

私を見てほしい

私に与えてほしい

他の誰かに注ぐ分も私に注いでほしい

私の心が理性を失う

我に還れば全てを失っていた

 

私は見ていた

僕がたくさんの糸と鎖に繋がれ縛り上げられていく様を

 

僕は見ていた

私がいつでも飢えて苦しみ、代わりのものを破裂するまで詰め込んでいたこと

 

私は願った

誰か私を満たして

 

僕は願った

誰か僕を自由にして

 

 そして僕らは願った

あの子を助けて

 

 

僕は動かない体で私を眺める

私は僕の頬を

撫でた

 

僕は私の

私の僕は

 

僕は私は

僕は僕の

 

僕の私が

 

 

 

体が痛い

宙吊りの僕

ぶらりゆらり

宙ぶらりん

どこにも行けやしないのに

左右に揺れる僕の首

 

とても寒い

破裂した体からビー玉が出ていく

亀裂からポロポロと零れていく

ころころころころ

少しも騙せやしなかった

ぺちゃんこになる私の心臓

 

 

 

私のActive

僕のActive

 

私のえーすまん

僕のえーすまん

 

私の救世主

僕の救世主

 

願いは一つ

目障りなあの子を

 

目障りなあの子を

 

 

目障りな目障りな

早く

あの子を

××××。